事故防止

交通安全運動って、警察のボーナスのため?

jiko-note

💡 この記事を読めば分かること

  • 交通安全運動の、本当の目的とは何か
  • 運動期間中に「取り締まり」が増える、本当の理由
  • 警察官が抱える、運動期間中のリアルな本音

1. 全国交通安全運動、また始まったな…正直、意味あるの?

春と秋になると、街のあちこちで一斉に見かける「全国交通安全運動」の黄色い旗や横断幕。
学校の前に立つ警察官や地域ボランティアの方々の姿。

「ああ、またこの季節が来たか」
多くの方が、そう感じているのではないでしょうか。

そして、少し意地悪な見方かもしれませんが、心の中でこう思ったことはありませんか?

「これって、一体何のためにやってるんだろう?」
「正直、形だけになってない?」
「もしかして、警察官のボーナス査定か何かのために、やってる感を出してるだけなんじゃないの?」

今回は、この誰もが一度は疑問に思う「交通安全運動」の本当の目的と、その裏側にある切実な想いについて、元・中の人として少し「ぶっちゃけ話」を交えながらお話ししたいと思います。

2. そもそも「交通安全運動」って、いったい何?

まず、この運動の公式な目的からお話ししますね。その目的は非常にシンプルです。

「国民一人ひとりに交通安全の知識を広め、正しい交通ルールやマナーを習慣にしてもらうことで、悲しい交通事故を一件でもなくすこと」

これが全てです。
国や県、市町村、そして地域の民間団体までが一体となって、「事故を減らそう!」と呼びかける一大キャンペーン、それが交通安全運動の正体です。

3. 本題です。「で、結局ボーナスは上がるの?」

さて、皆さんが一番気になっているであろう本題に入ります。
「交通安全運動を頑張ると、警察官のボーナスは上がるのか?」

答えは、断じて「NO」です。一円も上がりません。

そもそも、警察官の給与やボーナスは法律や条例で厳格に定められており、個人の頑張りが直接査定に響くような仕組みにはなっていないのです。

「じゃあ、なんであんなに一生懸命やるんだ?」
そう思いますよね。

その答えは、残念ながら「給料が上がるから」といったポジティブな理由ではありません。むしろ、その逆です。
警察官にとって、この運動期間は「絶対に事故を起こさせてはいけない」という、ものすごいプレッシャーとの戦いなのです。

もし、運動期間中に自分の管轄内で重大事故が起きてしまったら…。「よりによって、なんでこの時期に…」というのが、現場の正直な気持ちでした。

4. じゃあ、なんで「取り締まり」が増えるの?

交通安全運動と聞くと、多くのドライバーの方が「取り締まり強化週間だ」と身構えるのではないでしょうか。

その認識は、ある意味で正しいです。実際、取り締まりの機会は増えます。
なぜなら、この期間は普段なら別の業務をしている警察官も、交差点に立ったり、パトロールを強化したりするからです。必然的に、街中で警察官と出会う確率が上がり、結果として違反が見つかる機会も増える、というわけです。

これは、大きな国際会議(サミット)などが開催される時と似ています。街のお巡りさんが増えると、不思議と事故や街頭犯罪が減るというデータもあるくらいです。

しかし、一番伝えたいのはここからです。私たち作り手側が本当に願っているのは、「警察がいるから違反しないように運転する」のではなく、「事故を起こさないように安全運転に努めてもらう」ことなのです。取り締まりは、そのためのきっかけに過ぎません。

5. でも…「形だけ」「マンネリ化」してない?という厳しいご意見

とはいえ、「そんな事情は分かるけど、やっぱり形骸化してるよね」というご意見があるのも、私は重々承知しています。

実際、この「形骸化」や「マンネリ化」は、主催する側にとっても大きな課題として認識されています。
なぜマンネリ化してしまうのか。それは、どうしても「上からのお達し」で、全国一律の運動になりがちだからです。住民の皆さんが「またやってるな」とどこか他人事で見てしまうのも、無理はないのかもしれません。


⚠️ 注意点
交通安全運動は、決してボーナスのためのイベントではありません。それは、悲しい事故を一つでも減らしたいという願いと、現場の警察官たちのプレッシャーが入り混じった、非常に人間くさい活動なのです。

もちろん、運動のやり方には課題も多く残っています。
しかし、この運動期間が、私たち一人ひとりの交通安全への意識を、ほんの少しでも見直す「きっかけ」になるのであれば、大きな意味があるのではないでしょうか。

ABOUT ME
はちわれサクラ
はちわれサクラ
万年巡査長
元・警察官 × 損害保険会社の事故調査員。 ひき逃げ、死亡事故から保険金の不正請求まで、様々な交通事故の調査を経験。 法律の条文ではなく、事故の「現場」を語ります。「元・中の人」の実務目線で、リアルな情報だけを解説。 (現在はセミFIRE中)
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