【レンタカーで事故】返却遅れ・又貸しは超危険!その責任、誰が負う?知らないと怖い全知識

1. 「借りた車だから…」その安心、本当ですか?
旅行先でレンタカーを借りて、ドライブを楽しんでいるあなた。
慣れない道で、うっかり人身事故を起こしてしまいました…。
パニックになる頭で、ふとこう思います。
「でも、これはレンタカー会社の車だ。保険もついているし、最終的な責任はレンタカー会社が負ってくれるはずだ…」
その考えは、半分正解で、半分間違いです。
確かに、レンタカー会社は、貸し出した車の事故に対して、車の所有者・管理者として非常に重い責任(運行供用者責任)を負います。被害者は、運転していたあなただけでなく、レンタカー会社に対しても損害賠償を請求することができます。
しかし、それはあなたが契約内容をきちんと守っていた場合の話。
もし、あなたが契約に違反するような使い方をしていた場合、話は一気に複雑になり、あなたは「保険が使えない」という最悪の事態に陥る可能性があるのです。
2. 最も危険な違反行為①:「又貸し(無断転貸)」
レンタカーを借りたあなたが、免許を持っている友人に「ちょっと運転代わってよ」と、気軽にハンドルを任せたとします。
その友人が事故を起こしてしまったら、どうなるでしょうか?
この場合でも、被害者保護の観点から、レンタカー会社の責任(運行供用者責任)は、原則としてなくなりません。
レンタカー会社から見れば、あなたが友人に又貸ししていようと、その車を管理・支配していることには変わりないと見なされるからです。
(水色マーカー)しかし、問題はここからです。あなたが加入したレンタカーの保険(任意保険)の契約書をよく見てください。そこには、おそらく「契約者および申告した運転者以外が運転した場合の事故は、保険金の支払い対象外とする」といった内容の条文があるはずです。
つまり、レンタカー会社の賠償責任は残るものの、保険が使えないという事態に陥るのです。
その結果、レンタカー会社は、被害者に支払った賠償金の全額を、「契約違反をしたあなたが悪い!」として、あなたと友人に請求してくることになるのです。
3. 最も危険な違反行為②:「返却期限の超過」
「1日だけ借りる」という契約だったのに、うっかり返し忘れて、2日目に事故を起こしてしまった。
この場合、責任はどうなるのでしょうか?
これも非常に難しい問題ですが、裁判所の判断は、「契約が、客観的に見てまだ続いていると言えるか?」という視点で分かれます。
【レンタカー会社の責任が『認められた』ケース】
1日の返却約束だったのに、約55時間後(2日と少し後)に事故が起きました。このケースでは、「まだ契約関係が続いている範囲内だ」として、レンタカー会社の責任が認められました。(和歌山地判H6.12.20)
【レンタカー会社の責任が『否定された』ケース】
30日の契約期限を、約24日過ぎた後に事故が起きました。この間、レンタカー会社は何度も返却を催促し、警察に相談したり、借主の自宅を訪問したりしていました。
裁判所は、「レンタカー会社は、車を回収するためにやるべき努力を尽くしており、もはや車をコントロールできる状態ではなかった」として、レンタカー会社の責任を否定しました。(名古屋地判H19.10.16)
ポイントは、単なる時間の長短だけではありません。「レンタカー会社が、返却させるための努力を尽くしていたか?」も、重要な判断材料になるのです。
返却の催促を無視し続けた後の事故では、あなたは「もはや契約者ではなく、単なる無断使用者だ」と見なされ、レンタカー会社という後ろ盾を完全に失うことになるのです。